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『龍が如く0 誓いの場所』感想

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多くのゲーマーが「ヒト狩り行こうぜ!」という気安い呼びかけのもとに膨大な時間を溶かしていった2018年初頭、僕は2015年にリリースされた『龍が如く0 誓いの場所』を粛々とプレイしていた。

龍が如く』シリーズをプレイするのは2005年に発売された1作目を発売日に購入し、プレイして以来のこと。シリーズファンになるには至らなかった僕が久々に神室町を訪れたのは、『龍が如く0』がシリーズ最高傑作との呼び声が高い作品であること、そして1980年代の好景気に沸く日本、さらには歓楽街を舞台としたゲームは希少であり、本作ならではの体験が味わえるのではないかと期待したことが主な理由だ。


スピンオフで戦国時代や幕末、ポストアポカリプスを舞台にしたことはあるものの、ナンバリングタイトルでは現代劇を扱ってきた『龍が如く』シリーズ。しかし本作の舞台は前述の通り1980年、正確には1988年の12月に物語の幕を開ける。

親の顔より見た極道、おなじみ桐生一馬(きりゅう かずま)と、みんな大好き「嶋野の狂犬」こと真島吾朗(まじま ごろう)のW主人公の視点から、彼らとゆかいな仲間たちの若かりし日の活躍が描かれていくのだ。

 


最高のメインストーリーとキャラクター

まずメインストーリーだが、これが予想以上に大変面白かった。

東京、神室町*1で殺しの濡れ衣を着せられた桐生と、大阪、蒼天掘*2で殺しの依頼を受けた真島。2人に降りかかった何の繋がりもないように思えた出来事が、それぞれに謎が謎を呼び、少しずつ交わり、やがて大規模な抗争へと発展していくのは、わずかに強引な展開もあるもののサスペンスとして非常に見応えがあり、後半は夢中で一気にプレイしてしまった。

 

実際にプレイしていないとこのシリーズはプロモーション映像の馬鹿馬鹿しさの印象が強いが、本作のメインストーリーには拷問や殺人、脅し、騙し撃ちといった裏社会を描くには不可欠なフレーバーが散りばめられていて、それゆえ黒に染まり切ることのできない桐生や真島たちの仁義を貫く生き様に心を打たれる。

特にトリックスターとして絶大な人気を誇る真島吾朗(僕も1作しかプレイしていないながら大好きなキャラクターだ)の若き日の純愛は、これまでの彼への印象を大きく塗り替えるもので、その結末には最期の最期まで目が離せなかった。

 

脇を固めるキャラクターたちも魅力的な人物が多い。共に育った桐生を「兄弟」と呼んで慕い、彼のためならば時に所属する組の方針に歯向かうことさえ厭わない錦山彰(にしきやま あきら)の在り方には胸が熱くなる一方で、1作目の結末を知っている身としては切なさが募る。他のキャラクターたちも敵含め憎めない者が多く、いわゆる死亡フラグ的なカットシーンを観た後は彼らの存命を心から願わずにはいられなかった。

加えて本作では中国残留孤児の過酷な人生にスポットが当たっており、この点も不謹慎な言い方だがとても興味深いものであった。

 


AV女優の名前が覚えられるサブストーリー

手に汗握るメインストーリーとは対照的に、サブストーリーは心の底から馬鹿馬鹿しいものばかり。エセヤンキーに正しいヤンキーとしての態度を教えるだとか、内気で客を罵れないSMの女王様にM男が喜ぶ罵り方を伝授するだとか、本当に心の底から馬鹿馬鹿しいものばかりだ。

当初はそのあまりの落差、依頼のリアリティの無さ、しょうもなさに辟易したが、これはこれで同シリーズならではの”味”なのだと思い直し、それからは次はどんな馬鹿馬鹿しい話を持ちかけてくるのかと心が躍った。


ところで本作のサブストーリーに登場する若い女性キャラクターたちは、ほとんど(というか全員?)が実在のAV女優をモデルにしている。

サブストーリー進行中、彼女たちは下の名前しか明かされず、サブストーリーをクリアすることでモデルとなった女優たちのフルネームが判明することになる。

それがどんな流れかというと、神室町と蒼天掘には「ガンダーラ」という個室ビデオ店があり、サブストーリークリア時、画面内に「ガンダーラに『〇〇 ××(女優のフルネーム)』のイメージビデオが入荷しました!」というインフォメーションが表示されるというものだ。

このイメージビデオ自体はモデルとなった女優たちが際どくもない水着姿で微笑んでいる様子を映した程度のもので、観終えた際、ティッシュ箱が大写しになると共に桐生たちが「ふぅ・・・」と一息つく暗喩に満ちたシーンがあることに戸惑いを覚えるような代物となっている。

しかしもしあなたが男性で、その女優のことをご存知なかった場合、きっとさっき知ったばかりの彼女のフルネームをDMM.comの検索窓に入力するだろう。

サブストーリーで初心なカップルの恋のキューピット役を完遂した後、その片割れが複数の男性とまぐわっているサンプル動画を目にするのはなかなか奇妙な感覚だったが、これはゲーム内に直接的なエロを持ち込むことなくエロによってプレイ意欲を刺激する斬新な手法と言えるかもしれない。

 


ガラパゴスゲームとしての『龍が如く

もちろん『龍が如く0』に登場する実在の人物はAV女優だけではない。

いつものようにコワモテの個性派俳優をモデルとしたキャラクターが登場しており、今回は竹内力、小沢仁志、鶴見辰吾といった俳優たちがこれにあたる。もちろんボイスアクトも本人たちだ。

また現実とのリンクという点では、外食チェーン店やドンキホーテ等とのコラボレーションも健在、これらの店舗がゲーム内の歓楽街に軒を連ねており、『龍が如く0』発売当時は現実の各店舗で作品とのコラボ商品が販売されるなどのプロモーションも行われていた。

 

話題性が高いキャスティングやコラボからは龍が如くシリーズが持つしたたかさが見て取れる。

チェーン店とのコラボではゲームメディア以外の場での作品の露出が増えるし、コワモテ俳優たちの顔力(かおぢから)は文字通り作品の顔になる。シワやニキビ跡、顔の筋肉の動かし方まで再現された彼らのCGモデルは普段ゲームをプレイしない層にも強いインパクトを残すはずだ。

キャスティングに関しては他のゲームと比べても割合高めの開発資金を割り振られていると考えて間違いないと思う(最新作なんかビートたけしだし)。それはプロモーションも兼ねるもので、ゲーム部分の改良に割り振る以上にダイレクトに売上に直結するだろう。

 

龍が如く0』のゲームプレイはざっくり分けると箱庭でのフラグ立てに終始する「探索パート」と奥が深いとはいえない「バトルパート」、それからそこそこ長めの「カットシーン」を順繰りに繰り返していくものだ。タイトル毎の工夫は見受けられるもののPS2時代から大きな変化はあまりなく、リリースされた2015年の基準から考えても少々古臭いことは否めない。

しかしそれはきっと国内でより広い層にリーチするための取捨選択の結果だ。

プロモーション、話題づくりに直結する部分にリソースを使い、ゲームのコアとなるメカニックは最低限のブラッシュアップやファンが飽きないためのタイトル毎の些細な差別化に注力する。これにより同シリーズは長年の蓄積で効率化した開発ノウハウもあってほぼ毎年のように安定した新作のリリースを実現させている。

 

思えばMGSやゼルダ、FFといった人気国産タイトルが広大なオープンワールドを舞台としたゲームへと変貌していった昨今も『龍が如く』はこの波に乗らず、従来通りのコンパクトな箱庭を舞台としたシリーズを作り続けた。

博打を打たず、まず国内で確実な利益を見込めるゲームとして完成させる……それが現在セガコンシューマゲーム部門の屋台骨と言えるシリーズに課せられた使命なのだろう。

けれどそうして独自の方法論が貫かれ続けた上で生まれた『龍が如く0』には、海外AAAタイトルや、世界規模で大ヒットすることを使命とした国産タイトルにはない「独特の味」が間違いなくあった。

 


1988年の街並みと喧騒

先ほど本作のゲームプレイについて少し否定的に書いたが、細部には前述した「独特の味」が宿っており、このシリーズを長らく遊んでいなかった身としてはかなり新鮮な楽しさが多く見受けられた。

 

まず特筆したいのは歓楽街のディテールだ。

開けた場所で街の風景を見据えればバブル期のデザインを模した多種多様な店舗の綺羅びやかな看板がずらりと並び、街ゆく人々の服装や髪型も当時の流行に則ったもの。僕のような人間にとっては「懐かしの映像」や古い邦画などで、テレビの画面を通してしか観たことがない光景がそこには広がっていた。客の呼び込みをしている者たちの軽薄な言葉遣いや、言葉としての意味を成さない喧騒の表現もとてもリアリティを感じた部分だ。

表通りの明かりや喧騒が遠のく狭い路地裏も、じめっとした汚さが表現されていながらも何故か懐かしさを覚えた。

 

その時代の歓楽街の空気感を知らないので再現度の高さを論じることはできないが、今はなき、けれどかつて間違いなく存在していた空間に思いを馳せることができたという点で、本作の箱庭は他のゲームにはない独自のリアリズムの獲得に成功しているように思う*3

 

 

熱いバトル、失われるリアリティ

歓楽街の探索中にヤクザやヤンキーに絡まれたとき、またはストーリー上のイベントで敵対する人物が現れたとき、本作は「バトルパート」に突入する。要するに喧嘩だ。

龍が如く0』では「バトルスタイル」というシステムが採用されている。桐生ならば「チンピラスタイル」、「ラッシュスタイル」、「壊し屋スタイル」、真島ならば「喧嘩師スタイル」、「ダンサースタイル」、「スラッガースタイル」のそれぞれ3種類の異なる流派から1つを選択し、バトルを行うというものだ。

スタイルはバトル中もボタン1つで切替可能なので、状況に合わせて使い分けていくのが楽しく、ゲーム全体のマンネリ感を軽減することにも成功している。特に真島のダンサースタイルは一対多数のバトルに強く、大勢の敵に囲まれた際にブレイクダンスで薙ぎ倒していく様はさながらRUDE BOYSなのでその筋の人は必見だ。

 

各スタイルはお金を消費して強化、スキルを習得していく他、各スタイル毎に師匠から与えられるチャレンジを成功していくことでも専用のスキルが手に入る。この辺りも徐々にバトルの手触りが変化していく楽しさに繋がっている。

ちなみにスタイルの強化、スキル習得を行う際に掛かる金額は、1つの項目につき数十万~数千万円、終盤になると数億円もの莫大な数字となっているが、普通にゲームを進めていけばその程度のカネはすぐに貯まる。

何故なら街中で絡んでくる雑魚共を倒しただけでも数百万円が手に入るし、ストーリーの節目節目では「クリア報酬」という出処の分からないカネが数千万、数億円単位で桐生たちの財布に突っ込まれるからだ。さすがバブル時代である。

 

一方で街中にある薬局やコンビニ、ドンキホーテなどで購入できる回復アイテムの値段は高くても数万円程度。これはアイテム欄に空きさえあれば無尽蔵に回復アイテムが購入できることを意味する。

かなり大雑把で大胆な調整に思えるかもしれない。しかしバトル自体が大味でプレイヤースキルでは防ぎようがないダメージを受ける局面が多々あることを考えれば、不要なイライラを軽減し、アクションゲームが苦手なプレイヤーへの救済も兼ねているこの調整は英断と言えよう*4

 

バトルパートは探索パートとはテイストがかなり異なる。ここでは攻撃がヒットすれば派手なエフェクトが発生し、大技を当てれば相手は激しく吹っ飛びながら大量の札束を撒き散らす。とても漫画的というか、デフォルメされた表現が目白押しだ。街の喧騒も鳴りを潜め、ハードロック調のBGMが鳴り響く。

探索パートからバトルパートに移行する際には、本作に宿っていたリアリティが急速に遠退いていくような感覚があった。

プレイヤーのゲームへの干渉度が比較的低い探索パートから、干渉度が高いバトルパートになるとリアリティが失われる、というのは少し奇妙なことのように思う。積極的に干渉すればするほど作品世界がリアリティを帯びた『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』などとは対照的だ。

これは『龍が如く』シリーズが箱庭の景観としては現実的リアリティを志向しながら、ゲーム部分は漫画的なデフォルメ文化の上に立脚していることが原因であると思われる。 

人によってはこの分裂を快く思わないかもしれないが、リアル志向で「ゲーム的な嘘」を可能な限り脱臭している海外オープンワールドタイトルとも、デフォルメ文化に根ざした表現にゲームデザインによってリアリティを宿した『ゼルダ』とも異なる、本作独自の「歪さ」を個人的には好意を持って受け取ることができた。これもまた国内をメインターゲットに据えたことによって生まれた「独自の味」と言えるだろう。

 

 

まとめ

龍が如く0 誓いの場所』はビジネス的な最適化の果てに古臭さと個性的な魅力が同居した、歪で、けれどとてもチャーミングなゲームだった*5

トータルの完成度で言えば海外のAAAタイトルには及ばないが、UBI系のオープンワールドタイトルに食傷しているときなどは興味深く楽しむことができるかと思う。

多くの魅力と欠点が表裏一体のゲームでもあるがストーリーとキャラクターは文句なしに素晴らしく、ファミ通の「アクション・アドベンチャーゲーム総選挙」で『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』や『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』などのタイトルを下して第一位に輝いたのも合点がいった(と同時にストーリーとキャラクターが何よりも重要視される風潮を改めて感じ、少々歯痒さもあったのだがこれはまた別の話だ)

龍が如く』シリーズは何となくコアなゲーマーには軽視されがち(というか自分が割りとそうだった)な作品群だと思うのだが、たまに触れてみることで得られる気づきが多いと分かったのは収穫だったし、そういった目的でプレイするなら時系列的に最も過去でありゲームシステムもある程度洗練されたこの『龍が如く0』は最適だろう。


長々と語ったが、とても楽しいゲームだった。
そのうちビートたけしとも拳を交えてみたい。

*1:架空の地名

*2:架空の地名

*3:惜しむらくはコラボ店舗が現行デザインの外装になっているため、80年代の風景を味わう上ではノイズになってしまっている点だ。

*4:無論、バトルの洗練が最も望むべき策であることは言うまでもない

*5:不動産、キャバクラなどのミニゲームはほとんどやり込めていません。悪しからず。