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サニーサイド四畳半

女児向けアニメ好きゲーマーによるゲームブログです。

『ヒュプノノーツ』 おとなの階段は片道切符

ゲームレビュー iOS Android ☆☆☆☆

今回はiOSAndroidで無料配信中のRPG『ヒュプノノーツ』のレビューをお送りします。

僕がプレイしたのは2015年2月24日に配信が始まったリメイク版。オリジナル版はAndroid専用の有料アプリで、リメイク版のリリースと同時に配信を終了したとのこと。

このゲーム、凄く好きなんですよ。ストーリーがかなりツボでした。難易度は結構高めなんですが、是非多くの人に遊んで欲しい。

ただこのゲーム、個人的にレビューを書くのがとても難しいのです。何より絶賛したいのはストーリー自体と、それをゲームに落とし込む手法についてなのだけど、何を書いてもネタバレになる気がするし、あれこれ解説するのも野暮な気がする。

だけどどうにか本作の魅力を自分の言葉でお伝えしたくて、書き始めたのがこのエントリー。今の時点でもどんな構成にするのかさえ全く決まっておりません。

見切り発車もいいところですが、最後までお付き合い頂ければ。

 

幼き日の甘酸っぱいひと時を追体験していく第一部

『ヒュプノノーツ』の主人公は、30歳前後の男性。名前は任意に決められるので、思い切って本名でプレイするのも良いでしょう。

ある日、彼のもとに身に覚えのない小包みが届くところから物語は幕を開けます。中身は「DPD」なる得体の知れぬ装置。同封されたメモを読むと、差出人は「魔法少女マッチ」なるこれまた聞き覚えのない人物で、「DPD」を使って自分を助けて欲しい、とのこと。

本作の舞台は、「DPD」を介して行き来が可能となった「夢の世界」。第一部では主人公の幼年期~中学生時代を追体験していくこととなります。

そこで描かれるのは、小学生時代のちょっとスレた少女「茉理」との出会いと、彼女との甘酸っぱいひと時、そして別れ。

幼い頃に仲の良かった異性との、恋には満たない関係への郷愁は、多くの方が胸のどこかに抱いている感情かと思います。

その敏感な部分をちくちくと突いてくる本作の導入は実に魅力的で、ここまで読んでピンと来た方はもうここから先は読まずに今すぐ本作をダウンロードする事をおすすめします。

 

ゲームシステムと物語の不可分な関係

第二部以降はまた別の人物の人生を時系列に沿って追体験することとなり、最終的には第一部プレイ時には予想もつかないようなクライマックスが待っているのですが、今回は割愛。ここからは本作のゲームシステムについて解説していきます。

『ヒュプノノーツ』のジャンルは「一次元ローグRPG」とのこと。「ローグ」というよりは、『Wizardry』、『世界樹の迷宮』等のダンジョンRPGを想像してもらった方が近いかと思います。で、「前後×左右」に移動できるのが「二次元」だとすれば、「前後」にしか移動できないのが「一次元RPG」の本作。

そう、本作のダンジョンは「進む」か「戻る」かしかない一本道。各章のダンジョンには一歩移動するごとに消費する「時間」と、ダンジョンの終点までの歩数を示す「距離」が設定されており、これらを考慮しながら前進と後退を繰り返してキャラクターを強化し、最後に待ち受けるボスに挑みます。

 

戦闘は比較的オーソドックスなターンベースのものですが、シチュエーションが少々独特。

敵キャラクターは、最初は「ピーマン」や「ニンジン」といった食べ物、しばらくすると「算数」や「読書感想文」等の学校の教科等が加わり、さらに進むと「仲の悪い子」等が出現。その後も、その時代時代の「苦手だったもの」や「嫌いだったもの」、もしくは「困難」が立ちはだかり、それらを克服していくような構図になっています。

第一部では主人公のステータスは「力」、「自信」、「運動」、「知恵」の四種類で、「仲の悪い子」に対しては「力」、「読書感想文」に対しては「知恵」と、相手によって異なるステータスが攻撃力を左右します。

これらステータスを後述するランダムイベントやアイテムの使用で上げていったり、いずれかのステータスが上がる代わりに別のステータスが下がる「状態異常」などを使って調整することで、戦闘を有利に進めていくことが可能です。

 

またダンジョン内では時々ランダムイベントが発生。これは主にステータスを上げるためのイベントで、その時点でのステータスによって成功確率が変わります。例えば幼年期であれば「三輪車に乗る」というイベントがあり、成功すれば「運動」が上がりますが、失敗するとダメージを受ける。中学生になると悪友から万引きに誘われるイベントが起き、断れれば「自信」が上がるといった具合。

 

本作のダンジョン内での出来事はDPDによる過去の出来事の追体験なのですが、日本で生まれ育った方ならば思い当たるような「人の成長」を、戦闘や能力上昇イベント、アイテムの取捨選択といった「ゲーム的な要素」で表現し、物語の感情導線とゲーム的な損得を一致させている点が異色だと言えます。それがポジティブな「成長」だけでなく、幼い日に当たり前に持っていたものの「喪失」といったネガティブな事象にも及び、心をざわつかせるのです。

 人生の時期によって求められる処世術が変わって行くように、第二部、第三部と進んでいくごとに、ステータスの名称は全く違うものになります。人の世を上手く生きていく為に、彼らが何を得て、何を失い、何処に辿り着くのか。是非その目で確かめてみて下さい。

 

おとなの為のおとぎ話

MOTHER2 ギーグの逆襲』のキャッチコピーに、「このゲームをはじめると…こどもはおとなに、おとなはこどもに、なってゆきます。」というものがありますが、『ヒュプノノーツ』はある程度これまでの人生で悩み、もがき、汚れてきた「おとな」であればこそ共感できる作品です。

しかし、おとなだからこそ、最終決戦及びトゥルーエンドの展開は、僕としてはいささか「綺麗すぎる」ようにも思えたのです。

でも、それもまた本作が意図した通りの感情なのかもしれません。『ヒュプノノーツ』は幼き日の無邪気で今思い返せばバカみたいな感情も、これまでに様々な「大事だったもの」を失い、汚れてきた過程も、全てを肯定する為の物語だったのだと思います。

きっとそれは夢物語の理想論。けれどそんな「全肯定」の物語が、厳しい現実に立ち止りそうになる時、「きっとその苦労だって無駄じゃない」と、そっと背中を押してくれることもあるかもしれない。そう思えるゲームでした。

 

最後にこのゲーム、かなり難易度が高い上にコンティニューは有料(100円)で、無課金で進めるには倒される度にダンジョンの初めからやりなおし(レベル、ステータス、アイテムも)となります。

ノスタルジックな物語の合間に「課金」によって現実に引き戻されるのは本作を楽しむ上でいささか障害になるかと思いますので、自分には難しいかな、と思えたら、早めにダンジョン潜入前のメニューでステータス上昇やアイテム購入を行うことをお勧めします。

ここでも課金が必要ではあるのですが、その後に課金を要する可能性はグッと減りますし、お話の続きが気になるボス戦といった局面で課金画面が何度も表示されるよりは精神衛生上好ましいと言えましょう。

ちなみに僕は意地になってコンティニューを連発してしまった局面があった為、最終的にこのゲームに1500円ほど使ってしまいましたが、それくらいの価値がある体験は出来たと思っています。

そしてなにより、この課金が現在2015年内リリースに向けて開発中という『ヒュプノノーツ2』の開発資金になるのだと思えば、安いものです。