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サニーサイド四畳半

女児向けアニメ好きゲーマーによるゲームブログです。

『Analogue: A Hate Story』やろうぜ、可愛いおにゃのことのハーレムエンドもあるし!

ゲームレビュー PC ☆☆☆☆☆

『Analogue: A Hate Story』はLove Conquers All Gamesが手掛けたノベルゲーム。作品自体のリリースは2012年ですが、2014年12月4日に日本語版の配信が開始されました。

僕は本作の存在を日本語版配信の半月ほど前に初めて知ったのですが、カナダ人の同性愛者の女性が手掛ける李氏朝鮮の文化をモチーフにしたSFノベルゲーム、という触れ込みに非常に興味がそそられ、日本語版の配信当日に購入したのでした。

先日全5種類のエンディングをコンプリートした感想としては、ノベルゲームのゲームデザインや、物語表現の有り方に関して、触れ込み以上に新鮮な体験が味わえた傑作でした。

 

好奇心をくすぐる幕開け

ある日、主人公は知人から、仕事の依頼を受けます。数世紀もの間、消息を絶っていた多世代宇宙船「ムグンファ」―突然レーダー上に現れたこの船からログファイルを回収、「ムグンファ」に何が起きたのかを調査するのが、依頼の内容となります。

ゲームをスタートして最初に現れるのは、ムグンファを制御するコンピュータの画面を模した「端末パート」。ここで画面の指示に従って構文を入力、コンピュータの設定を書き換えることで、美少女AIとコミュニケーションをとりつつログファイルを収集する、「ノベルパート」へと進むことができます。

このノベルパートが始まると、一気に様々な謎や違和感が、プレイヤーへと押し寄せることとなります。

まず依頼によると、主人公が協力してもらうべき船内セキュリティーAIは、「*ミュート」という名前だったはず。しかし最初に選択できるのは、「*ヒョネ」というAIだけです。ちなみに黒髪ロングの眼鏡っ子

現在は彼女が船内のログ管理を行っているとのことなので、協力してもらうことに。ムグンファで起こった出来事を考察する上で役立つ資料を幾つか提供してもらえます。その中で、彼女が「覚えておくべき言葉」として挙げるのが、「男尊女卑」という言葉。日本のギャルゲーやアニメのキャラ造形を模したようなキャラクターから提示されるシリアスな言葉に、誰もが面食らう事でしょう。

ムグンファで形成されていた社会は、「李氏朝鮮」の文化をモチーフとしており、女性にとって結婚とは、相手の男性に従い、一歩も家の外には出られないような暮らしを意味しているのです。同時に提供される、ムグンファ内で重要な役割を持っていた貴族の「家系図」でも、女性の名前は記録に残す必要が無いものとされており、フルネームが分からない女性を複数目にすることになります。

しかしこの「家系図」が持つ最大の違和感は、記されている人物の大半が、時を同じくして亡くなっている事です。

この冒頭で提示される謎や違和感が、僕を本作の物語世界へと力強く引き込んだのでした。

 

様々な視点から紡がれる、かつて存在した「社会」

その後、ゲームはムグンファに残されたログファイルを閲覧、気になるファイルを*ヒョネに見せ、関連するファイルのデータを送ってもらうことで進行していきます。

本作のAIとのコミュニケーションは、前述した「ログファイルを見せる」ことと二択の「選択肢」から選ぶことがメインとなっているのですが、これは数世紀規模で外部との通信が断絶していたムグンファの言語処理システムの不調により、主人公からムグンファへの言語によるコミュニケーションが出来ないという理由づけがなされています。

選択肢による意思表示、というのはアドベンチャーゲームではもはやお約束となっていますが、現実に照らし合わせればYes,Noしか選択肢が無いというのは奇妙なことです。こういったお約束としてスルーされがちな点に対して、しっかりと理由づけがなされているのは、個人的に関心した点です。

 

AIとのコミュニケ―ションによって徐々に解禁されていくログファイルも、実に興味をそそる内容ばかりです。

ログファイルは、かつてムグンファで暮らしていた貴族たちの日記や、親しい人への手紙が記録として残ったもの。書き手が異なれば立場も思想も異なり、プレイヤーはムグンファで形成されていた社会を、様々な視点から追体験することとなります。

ちなみにログに登場するキャラクターは皆朝鮮風の名前で僕らにとっては覚え辛く、初めのうちは誰と誰がどういった関係だったのか把握するのが難しかったりする(ログの時系列が入手する順番と異なっていることも多いため尚更)ため、「家系図」と照らし合わせ、メモを取りながらのプレイをお勧めします。

ログの中には思想の異なる親類との対立や、近親相姦を匂わすもの、夫の浮気(男性には重婚が認められている社会なので、違法性は無い)の相手と妻との情事など、かなりスキャンダラスなものも多く、知的好奇心だけではなく、下衆い好奇心を満たしてくれる内容も多く含まれています。

中でも浮気相手と妻とが互いに向けてしたためた手紙のログは、性別の問題を越えて互いを心から想い合い、だからこそ苦悩する様が克明に、官能的に描かれており、必見です。(女性の視点から書かれた濡れ場の描写は何故こんなにもエロいのか…)

もちろんこうしたスキャンダラスな部分は本作が描くテーマのひとつの側面に過ぎず、重要なのは僕たちとは異なる思想の中で生きた人達が居て、彼らは彼らで様々なしがらみに翻弄されながら、必死に生きていたということです。

 

途中からはもうひとりのAIである*ミュートが登場します。ちなみに朝鮮の民族衣装を着た金髪ツリ目のロリっ子。*ヒョネがムグンファの男尊女卑的な社会に否定的であるのとは対照的に、*ミュートは「そういうもの」として、自然に受け入れています。そして彼女は*ヒョネを忌み嫌っている様子。

当時の一般的な価値観をもつ*ミュートの意見も聞くことで、プレイヤーはログファイルをより多面的な視点で見ることとなります。

本作は過去に実際に存在した社会をモチーフとしたムグンファの思想について、全面的な否定や肯定をすること無く幕を閉じます。僕はこのあたりの問題について持論を展開するにはあまりに学が無い(最近twitterで漫画『ワンピース』は女性蔑視的か、という議論が熱を帯びていますが、あれに男性で持論を発言できる方は凄いな、と思います。それが知識によるものでも、短絡的なだけであっても)のですが、いちゲーマーの意見としては、少なくとも日本の商業作品では決して描かれないテーマであり、唯一無二の余韻と、今後のプレイヤーの考え方にも干渉するような影響力を持った作品として、高く評価すべきゲームだと結論付けることができるでしょう。

 

無駄のないゲームデザイン

本作にはエンディングが5種類存在し、最も到達難易度が高いのが、本エントリーのタイトルにもある「ハーレムエンド」。実際意味合いとしては間違っていないのですが、このハーレムエンドこそ*ヒョネと*ミュートが歩み寄り、異なる価値観を持ったお互いを受け入れ合う、本作の結びとして欠かせないエンディングとなっています。

ここでハーレムエンド到達へのヒントを書かせてもらうと、ゲーム開始直後から画面上に表示されていて、「これ、いつ使うんだ?」と感じている機能があれば、それがハーレムエンド到達への鍵です。僕はどうしてもハーレムエンドへの行き方が分からず、steamの英語で書かれた攻略情報(現時点で日本語の攻略情報は見つからなかった)を見て「やられた!」と叫びました。

それは、違和感を抱きながらもここぞというとき活用法に気づけなかった自分への失望と、ゲーム内のあらゆる機能(時として周回プレイですら)に何らかの意味があり、無駄がひとつもないゲームデザインへの賞賛が入り混じった、完全敗北を認める一言だったのだと思います。

 

総評

『Analogue: A Hate Story』は、ジェンダーについての問題意識が希薄な日本の商業作品ではきっと生まれないであろう作品で、異なった価値観を持った人々が互いを認め合う事の難しさと、そこにある僅かな希望を示しています。

また、ストーリーテリング、ゲームデザイン共に独自性が非常に高い点も特筆すべき長所と言えます。

当レビューではあえて語らなかった要素もいくつか存在し(単にレビューの構成がヘタクソで盛り込めなかっただけである)、きっとあなたは最初から最後まで好奇心を保ったまま本作に没頭することができるでしょう。

本作をプレイできたこと、2015年最初のレビューを飾るのが本作であることを僕は誇らしく思います。

 

余談

『Analogue: A Hate Story』では明かされなかった謎に迫る続編、『Hate Plus』が日本語にローカライズにされるのが先か、僕がプレイに耐えうる英語力を身に着けるのが先か、勝負だ!!