サニーサイド四畳半

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『セブンスコート』 エイプリルフール企画にあるまじき傑作ノベル

 先週は『ファタモルガーナの館』の余韻に浸りながら、Novectacle公式サイトでダウンロードできるフリーゲームをちょこちょこつまんでいました。

中でも昨年のエイプリルフール企画として配信された『セブンスコート』が実に面白かったので、今回はこの作品のレビューを行います。

 

ファタモルキャラの現代劇

『セブンスコート』は2013年のエイプリルフール企画として同人サークルNovectacleの公式サイトにて配信された、フリーのノベルゲームです。

同サークルの『霧上のエラスムス』(僕はまだ未プレイ)同様、『ファタモルガーナの館』のキャラクターを流用したパラレルな世界観となっていますが、上記2作と異なり、『セブンスコート』は現代が舞台です。

物語の導入としては、うだつの上がらないフリーゲーム開発者であるミシェルが、気が付くとRPGドラクエのような)の世界に迷い込んでおり、同じ様にこの世界に迷い込んだ、自身が管理するウェブサイト「ロワイヨムヘブン」の常連達と力を合わせ、脱出を目指すというもの。

序盤の脚本のテイストとしては、『ファタモルガーナの館』本編の「舞台裏」や、『人気投票ミニゲーム』(実際の配信開始時期はこちらの方が後)に近い、秀逸なボケとツッコミが飛び交うコミカルなものとなっています。

場末のフリーゲーム開発者サイトに集う面々なだけあり、登場キャラクターの多くは重度のネット中毒者。ファタモル本編の性質を残しながらもネットスラングが出てきたり、RPGフリーゲームの「あるあるネタ」が飛び出したりと、その筋の人たちには本編以上に感情移入のしやすい作品といえるかもしれません。

また、ミシェルが管理する「ロワイヨムヘブン」は実際にネット上に存在しており、登場キャラクターたちの書き込みを模した文面が並んでいて、こちらを読むことで本編がより楽しめるようになっています。

非常に凝ったつくりでありながら、肩の力を抜いて楽しめる、コメディテイストの作風はエイプリルフール企画に相応しい。基本重苦しい雰囲気とテーマだったファタモル本編とは異なり、『セブンスコート』はちょっとイタいオタクたちの珍道中を楽しめる明るい物語です。

そう思っていた時期が僕にもありました。

 

作者の本領が発揮される後半

物語はいくつもの疑問点を抱えたまま後半を迎えます。

何故彼らはこの世界に居るのか?

そもそもこの世界は何なのか?

たびたび挿入されるミシェルの回想シーンは何を意味するのか?

これらに答えが出る頃には、序盤のテイストを思い出せない程の辛く悲しい物語が姿を現します。

登場キャラクターは皆何らかの苦しみを抱えており、特に主人公であるミシェルが抱える葛藤の一部は、何らかの創作に携わっている方や、インターネットで見知らぬ他人から悪意を向けられた経験のある方には非常に共感できるものではないでしょうか。

登場キャラクターの「闇」を描き、それらに付随する伏線を怒涛のように回収していく様は『ファタモルガーナの館』本編を思い起こさせます。

ファタモル本編の各キャラクターを知っていればこそ引っかかってしまうミスリードなども巧妙に織り交ぜ、読み手の認識を何度も覆していく。脚本を担当した縹けいか氏の持ち味は本作でも余すことなく堪能することが出来ます。

 

ファタモルより先にやっても良いと思う

『セブンスコート』のエンディングまでのプレイ時間はだいたい3時間ほど。結末は決して大団円とは言えませんが、登場キャラクター達のその後の幸福を心から祈れるような心地よい読後感となっています。

『ファタモルガーナの館』は本質的な面白さが味わえるまでにこれ以上の時間がかかるので、そこまでにダレてしまう可能性もあります(というか僕が正にそうだった)

なのでファタモル本編の前に本作をプレイするのも良い選択かもしれません。

そしてファタモル本編だけで満足してしまった方にも、エイプリルフール企画だからといって軽んじずに是非プレイして頂きたい傑作です。

 

P.S. 関連作品をプレイする度にヤコポ君が可愛く思えてきて堪らない…