サニーサイド四畳半

女児向けアニメ好きゲーマーによるゲームブログです。

『ファタモルガーナの館』 鬱に次ぐ鬱からの夫婦漫才

遅ればせながら『ファタモルガーナの館』、トゥルーエンドまで到達しました。

ノベルゲームはそこまで多くプレイしてはいないのですが、そのプレイ遍歴の中にも心からのお気に入りとなった作品は、2本あります。

それは僕がノベルゲームも嗜むようになるきっかけとなった『シュタインズ・ゲート』と、キャラクター及びストーリーが非常に好みだった『キラ☆キラ』です。

『ファタモルガーナの館』は、僕が心から愛おしいと思える、3本目のノベルゲームとなりました。

本作については、すでに多くのプレイヤーが素晴らしいレビューを公開していますが、僕も自分の言葉で、本作の魅力について語っていきたいと思います。

 

※作品の性質上、レビューには多少のネタバレを含みます。

※本作はiOS版も販売されていますが、こちらはBGMが再生されないバグがあり、メニュー周りのレスポンスも悪い、不完全な移植となっています。本作の感動に水を差しかねないので、おすすめしません。なので、当エントリーのカテゴリーからも意図的に「iOS」の表記は外してあります。ご了承下さい。

 

幾度となくプレイヤーの認識を揺さぶるストーリー展開

あらすじはググればすぐに閲覧できますから、この際省略してしまいます。

しかし、このあらすじから本作のストーリーを正確に予想することは、まず不可能といって良いでしょう。

『ファタモルガーナの館』は、幾度となく我々の認識を覆し続けます。

別々の時代に館で起きた「悲劇」を、1つづつ見ることとなる1~4章。壮大な序章といえるこれらの物語ですら、キャラクター達はことごとく第一印象とは全く異なる本性を見せつけます。

そして迎える第5章、プレイヤーは本作の主人公が本当は誰なのか、知らされることになるのです。

ぶっちゃけた話、1~4章も悲劇的な物語として完成度は高いものの、登場キャラクター達の異常ともいえる性質は感情移入が困難なものばかりで、そこまでのめり込めるものではありませんでした。

しかし5章以降、本作が「誰」の為の物語であるか分かった後の推進力は、語彙力の無い僕には「すさまじかった」としか言いようが無いものでした。

本作が我々にかける「揺さぶり」は、ここからが本番なのです。

それまでの展開から思い込まされていた各キャラクターの「役割」はことごとく変貌を遂げ、彼らに抱いていた「印象」と彼らの「本質」は後から考えると笑えるくらいに異なる、そんな認識の「反転」が何度も起こります。

そんな展開を見せながら、バラバラに思われた物語のピースがひとつに繋がり、取りこぼすことなく伏線を回収、最終的には大団円を迎えるという手腕は、実に鮮やかでした。

 

「物語」と「キャラクター」

別々の時代の物語がひとつに繋がるということで、本作はファンタジー的な要素も含んでおり、それ自体を「ズルだ」と捉える方には、本作を手離しで賞賛することはできないかもしれません。

僕は設定が現実的で無くとも、その中で起こるドラマが納得できるものであれば良いと考えているため、この点は減点理由にはなりませんでした。

ストーリーが素晴らしいとされている作品には、その脚本の「上手さ」を保つために、作者の都合でキャラクターが「操られている」印象を受ける作品も少なからず存在します。個人的にストーリー目当てで遊んだ作品に一番がっかりする要因はこれなんです。

シュタインズ・ゲート』ですら、ストーリーを都合よく展開させるために、キャラクターが己の意思だとは思えないような行動を取る場面が多少なりありました(フェイリスやルカ子あたりが顕著)。「ドクター中鉢」というキャラクターなんかも、あそこまで実の娘に辛辣に当たる理由づけは十分では無いと感じ、やはり「物語を盛り上げるために生み出された存在」という印象が強かったです。

この点『ファタモルガーナの館』は、作品内で起こる様々な出来事にきちんとキャラクター達の「意志の介在」を感じることが出来ました。

本作の主要なキャラクターは皆しっかりとバックボーンが描かれています。作中で起こる悲劇には、キャラクター達が置かれた「立場」や「心の弱さ」に起因するものがほとんどなのですが、バックボーンを紐解けば彼らの行動には非常に納得感がありました。

前述したプレイヤーの認識を揺さぶり続ける優れたストーリーを、キャラクターの破綻無く紡ぎ切ったのは、素人の僕が想像するよりもずっと難しいことだったと思います。個人的に本作で最も称賛したい点です。

 

卓越した夫婦漫才

※微ネタバレ注意!

本作は物語の過程で「鬱ゲー」に類する要素を多く含んでいます。ボイスが無く、直接的なCGがあまりないことが救いではありますが、かなり痛々しい描写も少なくないので、苦手な方には厳しいかもしれません。

しかし心温まるエピソードや笑えるやりとりも時折挟まれるため、鬱一辺倒で気が滅入るということはありませんでした。

そしてこの「笑い」に関して、本作の作者は卓越したセンスを持っており、それが遺憾なく発揮されるのが、本編最終章の前半とボーナスシナリオである「舞台裏」のチャプターです。

 

最終章は繰り返される鬱展開と驚愕の真実の果て、全ての悲劇に終止符を打つための章です。この章が「笑える」というのは奇妙なことのように思えるでしょう。

本作の最終章は、想い合う2人がついに巡り会い、前述の目的のために行動を共にする(一般的な意味合いとは異なる)展開となっており、この2人の掛け合いが本当に秀逸なのです。

基本的に2人とも「ボケ」なのですが、ボケるポイントが絶妙に被っていないため、Wボケ&Wツッコミとして非常に完成度の高い漫才を披露してくれます。

2人は深い心の傷を負っているのですが、お互いを深く想い合っているからこそ可能な、相手を傷付けない絶妙なイジりも秀逸で、これもそれまでの鬱展開を吹き飛ばす愉快さです。

また、この章は主人公の他のキャラクターに対するツッコミもキレキレで、あの引きこもりの口下手がこんなに良いツッコミが出来るようになったのだなあと、愛の力の偉大さを再認識させられる想いでした。

最終章後半は彼らの掛け合いを見ることも出来なくなり、物語は怒涛のクライマックスを迎えます。前半の夫婦漫才はそこまでの作品のテイストとはだいぶ異質なものとなっているため、賛否が分かれるかもしれません。しかし、あの楽しい時間があったからこそ、この2人にはどんなことがあっても最終的には結ばれてほしいと心から願えるのだと思います。

 

そして「舞台裏」、こちらは作者が完全にリミッターを外しており、登場キャラクター達の不幸な生い立ちやその異常性、身体的特徴までを容赦なくイジり倒す実に酷い(褒め言葉)脚本となっており、楽屋ネタが好きな人には堪らない出来となっています。

 

呪われた館に想いを馳せて

そんなわけで、後半は作品の根幹以外の部分ばかりに言及していた気がしますが、『ファタモルガーナの館』は同人ゲームの枠に収まりきらない、屈指の完成度を誇るノベルゲームです。

今回はストーリーとキャラクターに焦点を絞ってレビューしましたが、そこに寄り添う楽曲やイラストも実に素晴らしく、後半顕著となる選択肢を使った仕掛けもプレイヤーの感情に訴えかける演出として優れた効果を発揮しています。

最近本作は小説やコミック、ドラマCD化といったメディアミックスが盛んに行われていますが、これらの要素を余すところなく味わうためには、やはりまず原典であるゲームからプレイして頂きたいですね。

公式サイトでは本作のキャラクターを使った、異なる世界を舞台としたフリーノベルゲームを配布しているので、こちらをプレイしつつしばらく本作の余韻に浸っていようと思います。

本作に触れるのが遅くなってしまったのが悔やまれますが、愛情に早い遅いは関係ないですよね?

本当に愛おしい作品です。