サニーサイド四畳半

女児向けアニメ好きゲーマーによるゲームブログです。

『Ib』 ツクールゲーとのファーストコンタクト

※本エントリーは過去に別のブログで書いたレビューの、加筆修正版となります。

2012年2月27日に公開されたフリーゲーム、『Ib』のレビューです。

ツクール制作のフリゲは初めて遊んだのですが、丁寧なつくりに驚かされました。

現在(元記事が執筆されたのは2014年5月)公開中の「Ver1.06」にてプレイ。エンディングは7つ中4つまで到達しております。

※少々ネタバレを含みます

  

閉じ込められた異様な美術館で、少女は何を想う?

本作は『RPGツクール2000』で制作されたホラーアドベンチャーゲームです。同ソフトウェアで制作された多くの作品と同じく、ゲーム画面はドット絵で描かれた2Dの見下ろし視点となっています。

主人公の少女「イヴ」は、両親と一緒に美術館を訪れますが、気づくとひとりぼっちに。自分以外のお客さんの姿は一切見当たらず、美術館の雰囲気も何だかさっきまでと違うようです。

本作の目的は、この美術館を生きて脱出すること。まるで美術館全体が意志を持ったようにイヴの行く手を阻み、展示品達も動き出して襲い掛かってきます。しかしイヴはいつまでもひとりぼっちではありません。途中で脱出を手助けしてくれる心強い仲間に出会うこととなります。

ゲームの進行としては美術館の展示品にまつわる謎解きがメイン。謎を解くことでカギなどのアイテムを手に入れ、美術館内の行動範囲が広がっていきます。中盤以降はイヴから仲間へと操作キャラクターをザッピングしなければ解けない仕掛けも存在します。難易度は低め。

追ってくる展示品から逃げるなど多少のアクション要素も存在しますが、基本的にお化け屋敷的なビックリ演出を味わいながら、謎解きとストーリーを楽しむ作品と考えて問題ないでしょう。

現在公開中のバージョンにおけるエンディングは全部で7種類あり、仲間たちへの接し方が分岐に大きく関わっています。


サービス精神かイタズラ心か、バリエーション豊かなビックリ演出

切ないストーリーが多くのプレイヤー及び動画勢の心を掴んだ本作ですが、個人的に特筆すべきと感じた点は、演出の良さ、バリエーションの豊富さです。

『Ib』はどちらかと言えば「驚かし系」のホラーです。怖さ自体はさほど強烈なものではありませんが、プレイヤーをビックリさせるための演出が非常にバリエーション豊かなのです。急に動き出す絵画、窓の外を横切る人影、一枚絵を利用したゾクっとする仕掛け、ザッピングなどのゲームシステムすらも恐怖心を煽る演出に活かしています。登場キャラクターではなくプレイヤーの側を妨害するような演出もあり、これは個人的にゲームキューブソフト『エターナルダークネス』の「サニティシステム」を彷彿とさせるものでした。

本作のビックリ演出は「これさっき見たよ~」というようなマンネリを感じさせることなく、あの手この手を尽くして最後まで僕を楽しませてくれました。
ちなみにグロとかはほぼ無いので、耐性の無い方もご安心を。(想像したらエグい、とかはちょっとある)


誰かの願いが叶うころ

※エンディングに関するちょっとしたネタバレを含みます

本作の個人的に最も評価している点は演出ですが、本作が一大ムーブメントを起こした理由を考えると、それはなんといっても魅力的なキャラクターたちと彼らが織りなすドラマにあるのでしょう。

本作で最も人気が高いのが、おかしくなった美術館でイヴが最初に出会うオネエ口調の青年、「ギャリー」。オネエな上にビビりなのに、たまに見せる男気や、イヴを気遣っての優しさが実に魅力的なキャラクターです。

主人公のイヴには基本的にセリフなどは無いのですが、あるイベントでは彼女がいかにギャリーを信頼しているかが分かり、心が温かくなりました。

次にイヴたちが出会うのが、金髪美少女のメアリー。イヴたちと打ち解けてからは、年端のいかぬ少女らしい天真爛漫な一面を見せてくれます。

本作のメインキャラクターは以上の3人です。前述の通り本作にはエンディングが7種類存在しますが、これらにはメインキャラクター全員が美術館を脱出できる結末は存在しません。

人によっては本作をエンディングまでプレイした結果、好きになれないキャラクターも居るかもしれません。

しかしいくつもの結末を目にし、3人が揃って笑顔で居られるエンディングが存在しない理由を知った後でも、そのキャラクターを心の底から憎むことはできるでしょうか?


フリーゲームももっと掘り下げていきたいと思えたきっかけ

本作で僕が関心したのは演出の丁寧さ、バリエーションの豊富さであり、決してダレることのないゲームテンポや、美術館というホラーゲームの舞台としてありそうで無かったシチュエーションも秀逸でした(僕が知らないだけの可能性大)。しかし物語の方はいくらでも類型が見つかるものだし、完成度が高いと言えどゲームとして「新しい何か」があったとは言えませんでした。

しかし本気で制作され、多くのファンを獲得したフリーゲームを遊ぶことで、この分野ももっともっと掘り下げていきたいな、と感じることが出来ました。

素晴らしいゲームに出会うための選択肢が広がるのは、とても幸せなことだと思うのです。